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が従来よりも遅くなる傾向がある。
次に、起重機船発注先(造船業者)の決定要因としては、第一に実績あるいは信頼性を重視する傾向にあることがうかがえた。これは、工事稼働期間が短いため、運用(稼働)に関するトラブルを防止するためと、仕様や見積もりにかかる打合せや工事監督への人員派遣等の省力化を図るためなどの理由によるものである。そして、海洋土木業者側の強いニーズとしての、『使い勝手』の良さに対する安心感が得られる造船業者であることも重要な判断要素となる。
第二に、言うまでもなく、妥当な価格(低価格性)による提供が可能な業者であることも重要なポイントとなる。根本的に海洋土木事業者の多くは、台船部についてはいわば「鋼板を貼り合わせた箱である」という認識が強いことと、今後についての不透明感(受注価格の低下の懸念)等を抱えていることから、投資マインドの面からも設備投資額の削減という価格低下圧力は、今後も強まると考えられる。
第三として、希望する納期のデリバリーが確保できる造船業者である点も重要な判断材料となっている。上で述べたような発注時期の遅延化傾向と合わせ、顧客の求める工期内での工事が行える業者であるという点は、今後さらにその重要性を増すことが考えられる。
【4】修繕
以上までは、作業船の取得(新造等)にかかるプロセスを述べてきたが、修繕工事に関する市場構造の特色ついて、主だった項目を整理しておきたい。
まず、道内の海洋土木事業者の工事受注の特性として、その稼働が北海道限定である社が多いことがアンケートで明らかとなった。従って、道外工事を行うことが一般的に少ないこともあり、道外工事のついでに現地で修繕を行うということが少ない。このため修繕のみを行うために回航費をかけてまで、道外に修繕発注を行わないという特性があり、道内造船業者にとって、非常にプラスに作用している。
また、先に掲げたアンケートの部分でも指摘したように、道内の海洋土木事業者は、修繕・整備において自社の職員で修理・整備できる部分については自社で実施している姿が把握できた。しかし、今後については、従業員確保難などの理由により、そうした自賄工事についても外注化される部分が増大することが見込まれ、道内の造船業者としては、修繕工事取り込みの狙い目となるであろう。
一方で、道内造船業者にとっての修繕工事受注のネックとなる点として確認しておかなければならない点は、まず、上架設備の不足があげられる。同アンケートによれば、「安心して修繕に出せる設備の具備」を求めるという要望が多く指摘された。また、今後の動向については、起重機船が大型化する傾向も予測される。こうした、上架設備の不足という点については、今後の道外への修繕工事の流出要因となることが懸念されるため、道内造船業者としては注視が必要である。
また、同アンケートによる要望では、「修繕工事の時期的集中による納期不安の解消」をあげる業者も多かった。これについては、従来から作業船の修繕は漁船修繕と時期的に競合しており、そうした事情の中、漁船より修繕利益が薄い作業船の修繕は敬遠される傾向にあったということを確認しておく必要があるであろう。

 

 

 

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